こんにちは。ぽぽです。
6年制の薬科大学を卒業して、現在調剤薬局で薬剤師として働いています。
職場で話をしていると、結構話題に上るのが、薬剤師としての仕事の愚痴、苦労話など…。
(どのような職業や職場でも同じようなものだとはお思いますが…(苦笑)
先輩薬剤師と話をすると、
「今の子たちは、6年間も大学にかようんだね~。私たちの頃は4年で良かったのに。大変だね~。」
「薬剤師って学費が高い割に、給料あがらないよね…。」
などなど。
ほんとに、薬学部を卒業して薬剤師になることにはデメリットしかないのでしょうか?
今回の記事では、私が実際6年制の薬学部を卒業・薬剤師として調剤薬局で働いている経験と、先輩薬剤師方の話を参考に薬学部卒で薬剤師になることのメリット・デメリットをまとめました。
目次
デメリット
冒頭でも述べた通り、薬剤師同士が集まったとき、
「私たち薬剤師でよかったね~。」
というポジティブな内容はあまりなく、
「薬剤師って…。」
というネガティブな話題になりがちです。
なのでまずはネガティブな内容からまとめました。
学費が高い
薬学部の学費は一般の大学に比べて高額です。
国立大学であれば、6年通って400万程度といわれていますが、私立大学の場合、年間200万円、6年間で1200万円以上の学費がかかります。
親御さんにとって大きな負担になります。
私も在学中「こんなに高い学費を払って…!」と大学への振り込みの時期が来るたびに散々文句を言われ、肩身の狭い思いをしました。(苦笑
それに加えて、交通費や日々の食費、教材費に交際費もありますし、もしひとり暮らしでもしようものなら家賃や光熱費も上乗せされます。
それが4年ではなく、更に2年多い6年間続くわけですから、かなりのお金がかかると思っていいでしょう。
私は幸い恵まれていたため、両親から学費を出してもらえました。(文句を言いつつ支払ってくれた両親に感謝!)
しかし、同期の中には奨学金を借りて卒業し、卒業時点で
「700万円の(返済義務のある)奨学金があるの…。」
という人もいました。
奨学金にも
- 返済義務のあるもの・ないもの
- 利子があるもの・ないもの
など、色々な種類があり、公的な機関が実施しているものから、大学が独自の奨学金制度を設けている場合もあります。
事前にどのような制度があるのかよく調べておきましょう。
昇給率が低い
このように、薬学部を卒業して薬剤師になるにはかなりの学費がかかります。
その割に給料の伸びはそこまで良くないとの声が、薬剤師の間からよく聞かれます。
年配の薬剤師の話を伺うと、一昔前は、バブルも相まって薬剤師の手取りが40~50万円という時代もあったそうです。
そのため、女の子をもつ親御さんたちが、こぞって子どもに薬剤師になるようすすめていたんだとか。
しかし、現在そのような好条件の就職先を見つけることは困難です。
今現在薬局やドラッグストアに勤める薬剤師の初任給は20~30万円の間が一般的で、他業種の初任給と比較するとわりと高めに設定されています。
一方激務でありながら給料が低いとされる病院薬剤師では、10万円台という場合もあるそうです。
実際職場で病院薬剤師から調剤薬局へ転職した先輩薬剤師に「転職して年収が200万円あがった」という話も聞きました。
このように初任給はわるくない薬剤師ですが、他業種と比べて昇給率はあまりよくないと言われています。
あくまで主観ですがあ、ベテランで年収500~600万円もらえるのであれば、よくもらえている方という印象です。
また、薬剤師は免許を持っていれば一律という感じなので、出世という概念も他業種に比べてあまりないように感じます。
薬剤師で出世というと店舗の長、つまり管理薬剤師や薬局長ということになりますが、そこまで手当が付くわけではないようです。
ただ、大きなチェーン店であればエリア長やもっと上層部の役職へ昇進&昇給も見込める場合もあるようです。
また深い知識を持っていれば学術部門への配属や手当の上乗せもありえますが、そこまで知識を蓄えるのは簡単ではありませんし、医学、薬学の知識が豊富であってもドクターほどバリバリ稼ぐことはなかなか難しいようです。
業務の負担増加
また昔は業務内容が調剤・監査・投薬※1と非常にシンプルでしたが、
今は「かかりつけ薬剤師」、「ジェネリック医薬品の推進」、「在宅訪問」※2で薬剤師に求められる仕事の内容が幅広く、そして厳しくなっています。
仕事内容に割に給料が高くないという不満もあるようです。
調剤・監査・投薬※1・・・調剤(薬を医師の処方箋通り集めたり作ったりすること)、監査(処方箋の内容と実際に集めたり作ったりした薬が一致しているかを確認する作業。それと同時に、処方された薬が薬学的・医学的に問題がないか確認する作業)、投薬(患者さんにお話をしながらお薬をお渡しすること)
「かかりつけ薬剤師」、「ジェネリック医薬品の推進」、「在宅訪問」※2・・・かかりつけ薬剤師(かかりつけ医のように、毎回同じ薬剤師が患者さんを担当し、継続的にお薬や健康のアドバイスをすること。)「ジェネリック医薬品の推進」(医療費削減のため、同一成分でより安価なジェネリック医薬品をお勧めすること)「在宅訪問」(自力での薬の管理が難しい患者さんのお宅に訪問して、お薬を整理すること)
メリット
いままで散々デメリットをあげてきました。
これだけ読んでいると薬学部を通って薬剤師になるのが嫌になってしまいそうです(苦笑
しかし、私を含めた薬剤師の皆さん、文句はいうけれど、それなりにいいところがあるから薬剤師という職業を続けているハズ。
本気で薬剤師が嫌でメリットを全く感じていないのであれば、心機一転、別の職業に転職することもできなくはありません。
(資格習得に6年間と高い学費を支払ったこと、中途での転職の厳しさを考えて断念する人もいるかもしれませんが…。)
それなりにメリットも感じるから続けていると思うのです。
ですから、次の章からは、私がこれは「メリット」だろうなと思うものをまとめてみました。
女性が働きやすい
薬剤師の仕事は、もともと家庭をもち、子育てをしながら働く女性薬剤師がパートとして働きやすいように発展してきた側面があります。
家庭をもち、子育てをしながら働く女性は、
- 出産・妊娠・子育てのため休職せざるを得ない
- 旦那さんの転勤の都合で一緒についていかねばならない
という課題に直面します。
一般的に女性の再就職は難しいとされますし、かつ就職できたとしても、離職前と同じような給料水準を保つのは難しいのだそうです。
しかし薬剤師の場合、昇給率はよくないといわれるものの、初任給は比較的高めに設定されているので、転職先でもちゃんとした額のお給料がもらえることが多いようです。
また、ほとんどの薬局において調剤・監査・投薬※1といった基本的な仕事内容は共通しています。
そのため、新しい職場でも業務内容にも順応しやすいのです。
このように、昔ほどではないにしても、まだまだ女性に働きやすい職種であることは間違いありません。さらに旦那さんと薬剤師の奥さんが共働きであれば、一世帯あたりの稼ぎもけっして悪いものではないかもしれません。
転職がしやすく、薬剤師の売り手市場
薬剤師は、大手転職サイトのリクルートやマイナビが薬剤師専門の転職サービスをかかえているほど転職があたりまえの職種です。
転職に対してのマイナスイメージもあまりありません。
なので先ほど話したように、女性のライフステージにあわせて転職することも比較的容易なのです。
また、大手企業ですら倒産やリストラのニュースを聞く昨今では、ずっと同じ企業に勤め続けることは少なくなってきています。
薬剤師であれば、たとえ今勤めている会社になんらかの事情で勤められなくなっても、転職できると思えば心強さを感じないでしょうか?
私たちが学生時代は薬剤師が飽和すると言う話を大学で聞いて卒業していったのですが、私自身が就職活動したときの状況を考えると、実際まだまだ売り手市場という感じがします。その理由をまとめてみました。
理由1:国家試験の難化
確かに、私立薬科大学の数は以前の2倍になりましたが、レベルはピンキリです。
それに薬剤師国家試験は年々厳しくなっています。
現在、国家試験合格率6~7割と言われています。
同じ医療系国家資格の、医学部や看護学部の合格率が8~9割であることを考えると、その厳しさがわかるでしょう。
また、せっかく薬科大学に入学したものの、留年や退学などで、そもそも卒業できない学生もすくなくありません。
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
【外部リンク】真の第102回薬剤師国家試験合格率(ランキング)
このように、薬剤師になるのは決して楽な道ではありません。
しかしその分しっかり勉強して薬学部を卒業し薬剤師免許を得ることができれば、ライバルと差をつけることができます。
理由2:高齢化
現在日本では高齢化が進み、それとともに薬を飲む人の数も増え続けているのです。
高齢になると、薬の数も多くなりますし、それを管理して毎日服用するのもとても大変です。
私のかかりつけの患者さんに軽度認知症の疑いのおばあさんがいらっしゃいますが、彼女は日付にたいする認知機能が落ちてしまい、薬をいつ飲めばいいのか分からず強い不安をかかえていました。
旦那さんがサポートしようとするのですが、
「旦那に指図されるのは、もう、うんざり!自分で薬を管理したい!」
という強い思いをもっていました。
でも自分ではどうもうまくいかないと、薬局に相談しに来られました。
そのおばあさんは、A病院のA先生から出されたお薬と、B病院のB先生から出されたお薬も飲んでいました。
さらに、お薬の1つは、お薬を飲む期間と、お薬を飲まない期間(休薬期間といいます)を繰り返す特殊な飲み方だったので、余計混乱されていました。
結局、お薬を、飲む日付が印字された透明な袋に機械をつかって詰め直すことで解決しました。(一包化といいます。)
若くて健康な人にとっては薬を飲むのは簡単なことです。
しかしお年寄りや、若い人でも持病をかかえ、たくさんのお薬を飲んでいると、お薬を飲むのはとても大変なことなのです。
「病院のドクターや看護師は忙しそうでとても相談できない」と言って、このような相談を薬局でしていかれる患者さんは少なくありません。
ところで、後日おばあさんがいらした際
「薬の飲み忘れの不安もなく、大変助かりました。」
と言ってくださいました。
こういうとき、薬剤師としてのやりがいを感じます。
このように薬剤師の仕事は、人と人とのコミュニケーションが最終的に重要になるので、データを扱うしごとや単純作業が次々とAIや機械に置き換えられつつある現代でも、将来性がある仕事ではないかと思います。
勉強したことが役に立つ
個人的には、この「勉強したことが役に立つ」というのが、私が薬学部へ入学し、薬剤師免許をとるにいたった最大の理由です。
学生時代の私には、学校で勉強することに対してこんな風に考えていました。
- 小中学校での勉強→高校入学に役立つ
- 高校で勉強→大学入学に役立つ
ところが、その次の
- 大学で勉強→????
となってしまったんです。
高校2年生のとき、たまたま有名文系私立大学の体験講義を受ける機会があったのですが、そのとき、
「この授業が一体将来、何の役に立つんだろ?」
思ってしまったのです。
純粋な学問にあまり興味が持てない高校生だったんですね( ̄∇ ̄)
こんな思いをかかえたまま大学の授業を4年間も受け続けるって正直辛いなって思ったんです。
せっかく学費を納めて大学へ行くのであれば何か確実に将来の役に立つ(資格が取れるなど)大学へ行きたいと思いました。
そのような選択肢として、医学部、歯学部、看護学部、薬学部、法学部、などがあるわけですが、学力や適正などから、結局薬学部に入学し、薬剤師になりました。
就職活動の不安がほとんどない
就活シーズンになると
「100社受けました。内定は●社です。」
のようなニュースをよく聞きます。
そのようなニュースを聞くたびに、メンタルそこまで強くない私に乗り切れるだろうかと恐怖を感じていました(笑
私は就活のときに、製薬会社や化学工業、食品などの一般企業の面接も受けていました。
しかし、それが全然受からない(笑 文系の子たちに比べれば少ない数しか受けていないので当然と言えばそうかもしれませんが…。
周りをみれば、あらゆる学部から優秀そうな学生たちが集まってきて、競争率は非常に高く感じました。
しかも、今までの受験では、
- 勉強する→学力を上げる→受かる
といった明確な指針がありましたが、
就職活動になると、
「コミュニケーション」だの「社会人スキル」なんだかよくわからないものが問われます。
そんなもの今まで習っていないし、一体どうしたらいいものか困惑しました。
確かに、薬剤師になるよりも、大手のホワイト企業に行ければお給料も待遇もいいのでしょうが、果たして私がその厳しい競争を勝ち残れるかというと、自信はありませんでした。
その一方で、
- 勉強する→国家試験を合格する→薬剤師になる
ほうが、リターンは大きくないかもしれませんが、確実な道に思えたのです。
案の定、調剤薬局・ドラッグストアの面接を受けましたが、ほんの数社しか受けていないのにもかかわらず、すべて内定がでました。
(ただし、病院薬剤師を目指す場合は欠員募集かつ厳しい面接があるので狭き門ではあるようです。)
ぶっちゃけ、「え!就職活動ってこんなに楽勝なの!?」
とひどく驚いたのを覚えています。
以上、薬学部・薬剤師のメリット/デメリット、いかがでしたか?
薬学部のメリット/デメリットという点で同僚などと話をしていると、デメリットが多くてちょっと悲しくなります(苦笑
もちろんデメリットで挙げた「学費」や「昇給率」はとても重大ですし、軽く考えてはいけないのは事実だと思います。
ただ、薬剤師が今後も必要な職種であることは確かですし、長年自分の仕事に誇りを持って働いている方も大勢いらっしゃいます。
それらのことを総合して、自分なりに私の考える、薬学部・薬剤師のメリット/デメリットをまとめてみました。
この記事が将来薬剤師を目指そうか、どうしようか考えているあなたのお役に立てれば幸いです(^_^)